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2008年4月 8日 (火)

映画『ダージリン急行』

ウェス・アンダーソン監督の映画『ダージリン急行』を観ました。

父を事故で失って以来疎遠になっていた3兄弟が、ダージリン急行という架空の電車に乗ってインドをヒーリングジャーニーする話です。

この兄弟はルックスが似ても似つかず、性格もバラバラ。Darjeeling1

それぞれがクセのある濃いキャラで、本当に兄弟!?という印象です。

長男フランシスはマニュアルどおりに進まないと気がすまない仕切り屋。

今回の旅は事故で瀕死の傷を負った彼が一念発起、「自分自身を取り戻す旅」をするため兄弟に召集をかけてスタートしました。

次男ピーターはできる妻の尻に敷かれて、大人になりきれてない感じです。

『海の上のピアニスト』のエイドリアン・ブロディが演じています。細い顔に父親の形見のでっかいサングラスが似合ってなくて可愛かったです。

ノーブルじゃない役も面白く演じられる人だと思いました。

長男と次男は、父親の形見のベルトの所有権や、どちらが父親の一番の息子だったか、など子供っぽいことでことごとく衝突します。

この2人の間に立つ羽目になる三男ジャックは一匹狼。売れない私小説家です。

映画の本編に入る前に、『ホテル・シュヴァリエ』というショートフィルムが流れますが、お行儀の悪い昔の恋人(ナタリー・ポートマン)に翻弄されるジャックの話です。

三男を演じるジェイソン・シュワルツマンは『マリーアントワネット』でルイ16世を演じました。この映画の共同脚本もやっています。アンダーソン監督、脚本のローマン・コッポラと3人で同じようにインドを鉄道旅行し、そのときのエピソードが映画にも盛り込まれているそうです。

行き先がなぜインドかというと、行方不明だった母親がヒマラヤの寺院で尼僧になっていたことを知ったからです。(この事実は最初は長男だけの秘密です。)

母は勝手気ままに生き、父親の葬儀にも参加しなかった、いわば育児放棄をしたような人です。

亡くなった父親はどんな人かあまり描かれていませんが、母親の不在の分、兄弟に愛情を惜しみなく注いだようです。

兄弟姉妹って家族という同じコンパートメントにたまたま乗り合わせた他人のようです。

両親のどちらかが運転士と車掌で、「出発進行!」と列車は進み、子供たちは降りる駅に着くとバラバラと降りていく。

運転士と車掌が(バラバラにでも)どこかで列車を走らせていたら、また乗り合わせることもあるけど、日常の忙しさに流されてそれもなかなかままらないことも多いですね。

私の場合は兄2人がそれぞれ13歳、11歳年上なので、一緒に暮らした時期が短く、あまり交わる部分がありません。正面から愛情を表現するにはちょっと気恥ずかしい相手です・・・

この兄弟はダージリン急行に乗らなかったら、絶交したまま一生会わなかったかもしれません。

もう舵取りがいなくなった家族という列車に再び乗ってみようか、乗ったら何が変わるんだろうという不安も兄弟たちの表情に見え隠れします。

父親の形見という、ファミリーネームのイニシャル入りの大小さまざまなトランクを抱え、3人は旅に出ます。

そういう意味で失われたつながりを取り戻す旅のようでもあり、新たな絆をつむぐ旅のようでもあります。

彼らは行く先々で聖地を訪れ、小石を積み上げたり、鳥の羽を空に返したりして、変わった儀式やイニシエーションを行います。

長男は「自分自身を取り戻すため」と大真面目で。次男と三男は嫌々ながら、訝りながら。

この辺が滑稽でおかしかったです。

インドの寺院、雑踏のマーケット、サリーを羽織った美人の客室係、列車の中でガラスのコップで供されるティー、砂丘での立ち往生、偶然出席することになった地元のお葬式 など、色彩豊かな映像に、ぐいぐい引き込まれます。

さて、彼らはママに会えるのでしょうか。和解は訪れるのでしょうか。

ラストシーン、マーク・ジェイコブズがデザインしたというルイヴィトン製のオレンジ色のトランクが花びらのようにホームを舞います。

1個1個、心の荷物が軽くなるようなエンディングです。

「この映画を観てサントラを欲しくならない人がどこにいる?」とどこかの評論家が書いていましたが、私も買ってしまいました。

インドの音楽のほか、ザ・キンクス、ローリングストーンズといった60年代のブリティッシュロック、ドビュッシーの月光やベートーベンのクラシック、オーシャンゼリゼの軽いメロディーが織り交ぜになって各シーンを彩ります。

ザ・キンクスの"Strangers"を聴くと、列車の窓から顔を出して風に髪をなびかせたくなってきます。

60年代、70年代の音楽に詳しい、私のストレンジャーの兄に久しぶりに連絡を取ってみたくなりました。

Dargeeling2

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