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2006年3月15日 (水)

命短し恋せよ乙女★「生きる」

命短し 恋せよ乙女  赤きくちびるあせぬ間に  赤き血潮の冷えぬ間に

~「ゴンドラの唄」吉井勇作詩 中山晋平作曲

Ume1 大正時代に女優の松井須磨子が歌って大ヒットしたというこの曲を聴きたくて、黒澤明監督の『生きる』を観た。

高校時代に一度観たことがあるのだが、死期を悟った主人公が、雪の降る公園でブランコを漕ぎながらこの歌を歌うシーンが非常に印象に残っていた。

以来十数年、カメラのシャッターを押したみたいにそのシーンが私の心の引き出しに収まっていた。

曲がり角に来る度、眺めてみる一枚の写真のように・・・

宇宙の誕生から今までをメジャーで図ったら、人の一生ってナノメートル単位になるんじゃないかな? 

そう考えると人生って短い!

『生きる』の中に出てくる主人公は、市役所の市民課長。

(演じるのは黒澤作品の常連の名優、志村喬。『七人の侍』や『羅生門』にも出演しているが、目がクリっとした可愛いオジさんです。)

若い頃の血潮は役所の官僚主義とセクショナリズムにスポイルされ、今は「時間を潰しながら」眠っているように生きている。

市民が陳情に来ても、「あれは土木課」、「これは公園課へ」とハンコを押すだけ。

そんな男が胃癌になり(当時は癌=死だった)、ヤケクソになって夜の街をさまよう。

男手一つで育てた息子も嫁の言いなりで頼りにならない。

Someinotsuki_3 七転八倒する中で若い女性に、「何故君はそんなに生命力たっぷりにイキイキしてるのかね」とすがりつくように問いかけると、

「あら、私はただ食べて働いて。それだけよ。」「でも工場で子供のオモチャを作ってるときに生きがいを感じるわね」

それを聞いて、Bingo! と悟った彼は、長年保留になっていた公園建設計画を実行しようと奔走する。

死を目前にして冬眠から覚めたかのように。

ぞっとするような官僚主義の壁にぶちあたりながらも、愚鈍なまでの粘りでやっと公園は完成する。

そして雪の舞う夜、公園でブランコを漕ぎながら、永遠に目を閉じる。

「命短し 恋せよ乙女・・・」

ささやかだけど、生きた証を手にした彼は微笑みを浮かべていた。

「生きる」って、時間をやり過ごすんじゃなくって、「Do」なのね。

自らDoしてCreate するからこそ人は生きる。

自分の中の空漠感を何で埋めるか、という話になったとき、私の友人は一言。

「行動じゃない?」

全くもって同感です。

P.S. 蛇足だけど、主人公の葬式のシーンがかなり面白い。

公園のシーンで終われば、ただの美しい話だけど、世界のクロサワはそこでは終わらせない。

役所の仲間たちが、「なぜあの人はあんなに人が変わったように前向きになったか」について口々に語り合う。

揃いも揃って、長いものには巻かれろの日和見主義、ご都合主義、権威主義。

「個人の功績なんてものは役所では存在しない」、「役所っていうのは何もしないことが仕事」と胸を張る面々。

お役所って未来永劫変わらないのかしら?とむなしくもなるけど、パンドラの箱の底に残ったヒトカケラの「希望」を信じたくなるラストシーンは爽快!

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